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梅津和時「清志郎君へ」
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あまりに突然で、言葉が出なかったよ。
癌だからといって君が死ぬわけが無いと、キングだからとか、ゴッドだからとか、そういうんじゃなくて、君が生身の人間だという事を知っていた上で、でも、そう信じていたんだ。
化学療法も、民間療法も君ほど知っている人間はそうはいなかった。
誰が死のうと、君だけは確実に自分が生きて行く方法を見つけられる男だと思っていた。
電話で聞いた君の声は元気そうだった。僕の還暦コンサートを楽しみにしている、と言ってくれたし、飛び入りする約束もしてくれた。
暇だから7月くらいには一緒に曲でも作ろうか、とも言っていた。
だから僕は君の死に対して、何の準備もできていないし何の覚悟も出来ていないままだ。

僕は君の横や後ろで演奏しているのが本当に幸せだった。
ほら、こうやって「だった」だなんて過去形で喋る事にはまだまだ抵抗があって、しばらくは馴染まないだろうなあ。
でも、一緒に演奏しているのが一番幸せだった。なによりもそれを言いたい。
こんな時によく言葉にする「ありがとう」っていうのとはなにか違う気がする。
誰よりも近くで君の声を聞いていたとしても、君はべつに僕に向かって音楽を発しているわけではなく、聴衆に向かって、いやそのもっと後ろの広い広いどこかに向かって声を発していていたのだから。
僕はそれが手伝えて、共犯者になれて嬉しかった。
君はステージの上で飛んで跳ねた。
いっしょになって僕も君ほどではないけど飛んで跳ねた。
まるで子供のようにステージで遊び回るのが世界で一番の贅沢な楽しみだった。
僕はステージ上で演奏しながら君の歌に何度も何度も感動した。
そんな歌手は他にはいない。
君はまぎれもなく、最も素晴らしい音楽家だ。
本当にそう思っている。

書きたい事は山ほどある。
君の知らない所で、君に人生を変えられた人間も山ほどいる。
音楽の世界だったら、よりいっそう。それはとんでもない影響力だったのだ。
君はさほど気に留めてはいなかったろうけど・・・。

あらためて、君と同じ時代、同じ場所で生きられたことに感謝します。僕はこれからも生きて行きます。
自分でこの言葉を強く言い続けていないとすぐダメになっちゃいそうなので・・・。

また、会おう!
梅津和時

http://www.k3.dion.ne.jp/~u-shi/090503.html
by POP_ID | 2009-05-03 20:19 | '00sあたり
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